キミノタメノアイノウタ
「瑠菜の気持ちはよくわかったわ」
母さんの声色が優しくて、何だか泣きそうになった。
奏芽にも千吏にも言えなかった気持ちを吐き出して、ようやく私は己の決断が間違いではないのだと思うことが出来た。
この気持ちは他の人にはあまり理解してもらえないだろうから。
……容易く口にすることが出来なかった。
「母さんは瑠菜が残ってくれて嬉しいわよ?この家も父さんとふたりきりじゃ寂しいから…」
母さんはそう言って、またお茶を啜った。
ふと、思った。
……兄貴が出ていって一番寂しかったのは母さんなんだと。
そう考えたら私はあの時、しがみついてでも兄貴を止めればよかったと。
少しだけ……ほんの少しだけ後悔した。