キミノタメノアイノウタ

……とうとう、この日が来てしまった。

私はグラウンドと校門が見えるように、下駄箱を背にしてひとり大きなため息をついた。

相変わらず、グラウンドからは野球部の掛け声が聞こえる。

それとは対照的に校舎の中は静まり返っていた。

普段なら夏休みでも夏期講習を受ける3年生や文化系の部活の学生がいる。

今日は土曜日ということもあって講習も部活動もほとんどが休みのようだ。

こういう静かな雰囲気は好きではない。

特に今日みたいな日はうるさいくらい騒がしい方が丁度よかった。

ただでさえ億劫な三者面談が更にものものしく思えてしまうからだ。

「遅いな…」

私は垂れてきた汗を拭いながら時計を見た。

約束の時間まであと5分しかない。

時間に遅れるのを何より嫌うあの人はまだ現れなかった。

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