キミノタメノアイノウタ
「それで、まだ来てないのか?」
奏芽は校門の方を目を細めて見た。まだまだ人がやって来る気配はない。
「うん。もしかしたら坂の途中で力尽きてるのかな?」
毎日のように通っている私達でさえひいひい言うくらいだから、とうの昔にこの学校を卒業した父さんにとってはかなり辛い道のりに違いない。
「大丈夫なのか…?」
「んー…。多分、時間には意地でも間に合わせるでしょ」
……なんたってお役所勤務の堅物ですから。
奏芽は呆れたようにコツンと私の頭を小突いた。
「違う。お前のことだよ」
「…私?」
「親父さんと一緒に面談なんだろう?」
何故か奏芽の方が不安そうだった。
さすが幼馴染だけあって、父さんの人となりを知っているからだろう。