キミノタメノアイノウタ
「ハア…ッ!!ハア…!!」
全速力で走っているせいなのか息が切れる。
こんなの何でもない距離なのに。
私は坂道を駆け下りると、ぐんぐんと速度を上げた。
(バカみたい)
……今は何も考えたくなかった。
(バカみたい)
……頭をからっぽにしたかった。
(バカみたい)
さっきの父さんの言葉が頭をこだましていく。
……今日、全てわかった。
ねえ?
なんで私の三者面談で兄貴の話をするの?
ねえ?
私の存在って一体なんなの?
弾き出した答えが単純明快で余計に苦しかった。
私は。
父さんにとって。
……兄貴の代わりでしかなかったんだ。