キミノタメノアイノウタ
「瑠菜じゃん」
……灯吾は今日も飽きもせずに堤防に腰を下ろしていた。
不思議そうに私を見上げるその姿が、涙で滲む。
「今日、面談だったんだろう?もう終わったのか?」
寄せては返す波の音が耳の奥に響いてる。潮風で髪が舞い上がる。
あれほど美しい青い海も今日は私の心を慰めてはくれない。
(どうしてなんだろう。聴きたくてたまらないの)
「お願い…。歌って」
「は?」
灯吾はポカーンと口を開いた。
「お願いだから……!!歌ってよ!!」
私はその場にしゃがみこんで灯吾に……灯吾の歌に縋りついた。
……泣きたかった。
思いっきり声を上げて泣いてしまいたかった。
父さんの機嫌を取りたいわけじゃなかった。
私の気持ちを知って欲しかったわけでもない。
ただ。
……兄貴の代わりとしか見てもらえてないのは辛かった。