キミノタメノアイノウタ
駅前にやって来てまずやることといったら、本屋に寄って適当な文庫本を買うことだ。
最近は本を選ぶという行為でさえも億劫になって、眼を瞑って手に取った本を買うという荒業を使っていた。
今日はベタベタの恋愛小説だった。
(…ハズレだ)
本は他にもあるけれど、自分のルールを曲げたくない。
俺は仕方なく件の恋愛小説を購入すると、次に駅ビルの中にテナントとして入っているファミレスに向かった。
一番隅の窓際のソファ席に陣取る。
コーヒーを飲みながら買ってきた本を読んで時間を潰す。
顔なじみになりつつある店員は今日もカップが空になると、声をかけなくてもおかわりを注いでくれた。
いつもと同じ日常。
それがずっと続いていくんだと思っていた。
……この時までは。