キミノタメノアイノウタ

「よくやるよね~!!寒くないのかな?」

「そうだねっ!!見てるこっちが風邪引きそう!!」

甲高い声に集中力が切れて、文章を追っていた目を周りの景色に向ける。

本の中では主人公が自分を裏切った男に復讐を終えたのはいいものの、良心の呵責に耐えきれずに思い悩んでいた。

……ベタベタの恋愛小説かと思っててたけどなかなかやる。

そう思いながら表紙を撫で付ける。

先ほどの甲高い声の女性二人組は肩についた雪を払いながら、ちょうど俺の隣の席に腰かけた。

パラパラと零れる白い結晶にギョッとする。

慌てて窓から外の風景を見れば、チラホラと空から白いもの落ちてきていた。

(マジかよ……)

吐息が当たって白く曇るほど、ガラスに顔を近づける。

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