キミノタメノアイノウタ
「瑠菜……。俺はどうしても歌いたかったんだ」
……祈るような気持ちだった。
“歌って”
そう請われたことが何より嬉しかった。
この症状が出てから誰も歌うことを求めてくれなかったからだ。
最初からああなることは予想できた。それでも歌ったのは俺のわがままだった。
……俺はずるい。
何も知らない瑠菜を勝手に巻き込んだ。
瑠菜が首を傾げて俺の顔を見た。
痛いくらい真っ直ぐな瞳だった。
もう、隠すことは出来なかった。
俺の歌を求めてくれたのは他でもない。
……目の前にいる瑠菜なのだから。