キミノタメノアイノウタ

「瑠菜……。俺はどうしても歌いたかったんだ」

……祈るような気持ちだった。

“歌って”

そう請われたことが何より嬉しかった。

この症状が出てから誰も歌うことを求めてくれなかったからだ。

最初からああなることは予想できた。それでも歌ったのは俺のわがままだった。

……俺はずるい。

何も知らない瑠菜を勝手に巻き込んだ。

瑠菜が首を傾げて俺の顔を見た。

痛いくらい真っ直ぐな瞳だった。

もう、隠すことは出来なかった。

俺の歌を求めてくれたのは他でもない。

……目の前にいる瑠菜なのだから。

< 144 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop