キミノタメノアイノウタ
「俺にはもう…歌うことしか残されてないから…」
この声が枯れても。身体がおかしくなっても。
歌うことをやめたら俺は俺でいられない。
「俺、歌手なんだ。でも今は満足に歌えない。だけど…」
俺の人生はハルと出逢ってからそのスピードを増している。
止まることなんて許されない。
「……どうしても歌いたい」
荒れた海の向こう側には、きっと目も眩むような星空が広がっているはずだった。
今は見えないその星にそっと願いを掛けてみる。
あの街にいたらこんな風に空を眺めることはなかっただろう。
歌えなくなってから狭い部屋に閉じこもっていた俺を連れ出してくれたのは侑隆だった。