キミノタメノアイノウタ
ビリビリに破いた楽譜がそこら中に広がっていて足の踏み場もなかった部屋から。
侑隆はうなだれている俺の腕を引っ張って、奮い立たせてくれた。
(侑隆……)
心の中で小憎たらしい相棒に語り掛ける。
……あの時、お前は俺が本当に望むならどんな道でも進めるって言ったけれど。
……結局、俺にはこれしかなかったよ。
……歌しかなかった。
……お前にはそれが最初から分かっていたんだろう?
……なんかすげー悔しいけどお前の思惑通りだよ。
……俺は他の生き方なんて知らない。
「あの…灯吾…」
瑠菜は俺の様子を窺うように、躊躇いがちに口を開いた。
……風は相変わらず吹き止まない。