キミノタメノアイノウタ
「さて…そろそろ帰るか…」
俺はすっと立ち上がって、海に背を向けた。
「あっ!!待ってよ!!」
瑠菜がそう言って後を追いかけてくる。
言いたい事も言ってスッキリした。
行きよりは幾分軽やかになった足取りのまま、道路へと足を踏み出す。
そのまま家まで歩いていると再び瑠菜が声をかけてきた。
「ねえ、いっこだけ最後に聞いて良い?」
「何だよ?」
「灯吾が今日歌ってた歌って何ていう曲なの…?」
俺はその場に立ち止まると、クルリと振り返って言った。
「“ハルのうた”」
……俺が初めて作った歌の名前だった。