キミノタメノアイノウタ
「瑠菜、父さんと仲直りしなさいね」
……母さんは私の心を見透かしているのだろうか。
この察しの良さを時々、不思議に思う。
私は小さく頷くだけで返事らしい返事をしなかった。
母さんはカバンを持つと、そのままパタパタと慌しく廊下を走って行った。
車のエンジン音が聞こえなくなった頃になって、再び朝食を咀嚼し始める。
三者面談から帰ってきてから様子がおかしかったことは自覚している。
あんなに泣いたのは久し振りだった気がする。
泣き腫らした眼はその後の騒ぎで冷やすことも出来ず、今も少し瞼が重い。
気がつくあたり、さすが母親というか。侮れないというか。
……それとも、父さんから何か話が伝わっているのだろうか。