キミノタメノアイノウタ
いや、よくよく考えてみれば当たり前なのかもしれない。
タツとは幼馴染だし、兄貴がここから出ていった後も連絡をとりあっていた可能性もある。
結局、私ひとりだけだったのだ。
……何も知らないでいたのは。
そうやって黙々と足を動かしていると、ようやくタツの家の玄関が見えてきた。
田舎特有の不用心さのせいで施錠されていない玄関扉を開ける。
「タツ!!いるー?」
そう呼びかけると、居間の襖が開いて恵じぃが顔を覗かせた。
「瑠菜ちゃん!タツなら出掛けて行ったぞ!」
恵じぃはスイカを片手にして言った。