キミノタメノアイノウタ
「恵じぃ、タツはどこに行くって言っていたの?」
私は昼間だからてっきり畑か家にいると思って訪ねたのだ。
「んー。どこに行くって言ってたかな…」
ボウッとテレビの画面を見つめる恵じぃは実に心許ない。
昔はこんな風にボンヤリとしていることはなかった。
タツが仕事を手伝うようになって、一線を退いてから恵じぃはすっかり歳をとってしまったように感じる。
……いや、実際いい歳のはずだが。
去年、喜寿のお祝いをしたことは記憶に新しい。
(その歳でパイ娘が好きってどうなのよ……)
私はテレビ越しにパイ娘へ小さく手を振ってる恵じぃを見てそっとため息をついた。