キミノタメノアイノウタ

「暑い…」

そう言って灯吾は着ていたTシャツで汗だくになった顔の汗を拭った。

「あのねえ、夏が暑いのは当たり前なんだからわざわざ口に出さないでよ」

ただでさえ暑いのに余計に暑さが増す気がして、愚痴る灯吾をなじる。

……タツが畑に連れて来いとか言うから、わざわざ案内しなきゃいけなくなったんだ。

脳内万年夏男のタツを頭の中で袋叩きにすると、少しだけ胸がスッとした。

涼しかった朝方と違って、太陽の昇りきった昼過ぎのこの時間は外出にはとても不向きだった。

タツの家へと続くこの砂利道には背の低い雑草はあるものの、日陰を作れるような木はない。

私は熱中症防止にかぶっていた麦わら帽子をとり、それをうちわ代わりにパタパタと自分に風を送った。

(それにしても、暑い…)

「ねえ、ひとつだけ聞いていい?」

私は隣を歩く灯吾の顔をチラリと見ると、当の本人は畑まで続く砂利道がよっぽど珍しいのか世話しなく視線を巡らせていた。

放っておいたら迷子にでもなってしまいそうだ。

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