キミノタメノアイノウタ
「部屋にいるから何かあったら呼んで」
瑠菜はそう声をかけると自室に引っこんでいった。
俺は髭を剃って居間に戻ると電気もつけずに、縁側と外を仕切る硝子戸の前に陣取った。
辺りに響くのは雨と風の音だけだった。
雨は、俺が起きた時よりも激しさを増している。
庭に植えられて草木に雫が垂れては落ちていく。
(雨か……)
あぐらをかいてぼうっと外を眺める。
眼を瞑って雨の音に耳を澄ませれば、一定のリズムが刻まれていく。
こうしているとまるで歌っているような心地よい気分になる。
……やっぱり俺は音楽を捨てられない。
そっと眼を開ける。
……2度目にハルに会ったのはこんな雨の日だった。