キミノタメノアイノウタ
「何だよ?」
灯吾は暑さのせいで話すことも億劫なのか、恨めしげに私を睨んだ。
…その無愛想さに本当に迷子にしてやろうかと思った。
「どうしてこんな辺鄙な田舎に来たの?」
ずっと気になっていたので、この機会に聞いておきたいと思った。
灯吾は本当に何の目的もなくこの町にやって来たのだろうか。
それとも、人には言えない秘密でも抱えているのではなかろうか。
……灯吾の眼はこの町の自然を映しているはずなのに、どこか虚ろだった。
「侑隆からホントに何も聞いてないのか?」
「うん」
そう答えると灯吾はあからさまにため息をついた。
「……療養」
「療養……?」
「そう。俺だって悩み多き現代人なんだよ」
灯吾は肩をすくめると、私をからかうように言った。
「お前みたいな田舎者にはわかんないだろうけどな」
(どうせ、私はこんな辺鄙な町に住んでる田舎もんですよ)
「あんただってここにいる以上はこの田舎の一員なんだからね!!」
イーっと歯を見せるようにして言うと、灯吾は不愉快そうに眉を寄せた。