キミノタメノアイノウタ
俺は雑誌を棚に返して、弾かれたように外に出た。
慌てすぎて雨が降っているのに傘を持っていくのを忘れた。
雨の音に負けずに微かに聞こえるあいつの声。
……なんだかひどく懐かしい。
俺は走っている。
たかが一度聞いた歌をもう一度聴きたいがために走っている。
頭でごちゃごちゃと考えていた1時間前のことがどこか遠くの出来事のように思えた。
でも、しょうがないじゃないか。
……だって走りたかったんだから。
それほどまでに飢えていたのだ。
俺が思っている以上に、心は正直だった。