キミノタメノアイノウタ
「そうと決まったら、行くぞ」
侑隆はニヤリと笑って、今度はチキンと中身が書かれた楽譜を投げてよこした。
「5分で覚えろ」
「は?」
呆気に取られている間にも、侑隆はハルを急かして片づけをさせていた。
「なあ、行くってもしかして……」
「そのまさか」
荷物を持つと駆け出した二人に置いていかれないようについていく。
一体、どこに行くつもりなのだろう。
器用に人ごみをぬっていく二つの背中。
やがて繁華街の小さい角を曲がっていった。
飲食店のバックヤードらしき道を歩いていくと、今にも壊れそうな小さな階段が見えた。
侑隆は躊躇いなく上っていった。
それに続こうとすると、ハルが俺の制服の裾を掴んで引き止めた。