キミノタメノアイノウタ
14
「あれ?何してんの?」
勉強の合間にアイスでも食べようと思い立って、廊下を通って台所に行こうとした時だった。
母さんが押入れをガサゴソと漁っていたのを発見して声を掛ける。
母さんは丁度いいと言わんばかりに手招きした。
「浴衣探してるのよ。去年はどこにしまったんだっけ?」
半透明の衣装ケースの中身は母さんによって見事に、グチャグチャになっていた。
「浴衣?」
(そんなもの出してどうするんだか)
いまいち反応が鈍い私に母さんが驚いたように言う。
「もしかして忘れてるの?花火大会、来週じゃない」
そう言われてみれば。
柱に引っかけてあるカレンダーにはしっかり赤くマーキングがされていた。
毎年お盆の時期に行われる花火大会。
私はその日付が来週に迫っていたことをすっかり忘れていた。