キミノタメノアイノウタ
「今年も奏芽くん達と行くんでしょ?」
「どうだろう。今年はみんな受験だしね」
特に千吏なんかそんな余裕があるとは思えない。
確か、その辺りに模試があったような気がした。
「あっ!!あったわ!!」
母さんが嬉しそう声を上げる。
押入れから最後に取り出した衣装ケースの蓋の上には、浴衣と白い張り紙がしてあった。
「来週までに干しておくわね」
母さんは浴衣一式を大事そうに抱えていった。
(花火大会か…)
冷凍庫からアイスを取り出す。袋を取って口にくわえながら考える。
(……灯吾も行くかな?)