キミノタメノアイノウタ

「奏芽こそ財布落とさないでよ?」

ふふんと勝ち誇ったよう鼻で笑う。

奏芽はうんざりしたように顔をしかめた。

「うっせーよ!!」

中学1年生のときに全財産が入った財布を落として大騒ぎしたことをまだ奏芽も覚えているようだ。

いつからだったかはもう忘れてしまった。

千吏がこの町にやって来る前から、私達は一緒にこの花火大会を見に来ていた。

親に連れられて来た頃に比べたら随分成長したと思う。

私達はもう誰の手も借りないでこの人ごみを歩いていける。

その気になれば迷子にならずにどこにだって行ける。

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