キミノタメノアイノウタ
奏芽は再び携帯を取り出す。
「ほら、千吏が先に会場に行っててくれだって」
奏芽の携帯の液晶画面を一緒に覗き込む。
「大丈夫かな、あのふたり……」
「さあな。ほら、ふらふら歩くなよ。こけるぞ?」
奏芽がぷっと思い出したように吹き出す。
きっと私が小学5年生の時に花火に見とれて、派手にこけたことを思い出したに違いない。
「もう…やめてよ…!!」
そうやって笑いの止まらなくなった奏芽の腹に肘鉄を食らわせる。
下駄の歩きにくさと言ったら、普段履いているスニーカーが一級品に思えるほどだった。