キミノタメノアイノウタ

「千吏のことだから、他の出店にも寄ってるんだろ?」

(間に合うかな?)

急に不安に襲われる。もし、間に合わなかったらどうしよう。

「今年は…最後なのに…」

巾着の紐を握る手に力が入った。

千吏が大学に受かってこの町から出て行ったら、もう3人で花火を見ることもない。

(千吏のバカ…)

……知っているくせに。

だからみんなで来たかったんでしょう?

思い出を作ろうとしたんでしょ?

……この町に残る私達が寂しくならないように。

隣に立つ奏芽の甚平の裾をぎゅっと掴む。

< 264 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop