キミノタメノアイノウタ
「千吏のことだから、他の出店にも寄ってるんだろ?」
(間に合うかな?)
急に不安に襲われる。もし、間に合わなかったらどうしよう。
「今年は…最後なのに…」
巾着の紐を握る手に力が入った。
千吏が大学に受かってこの町から出て行ったら、もう3人で花火を見ることもない。
(千吏のバカ…)
……知っているくせに。
だからみんなで来たかったんでしょう?
思い出を作ろうとしたんでしょ?
……この町に残る私達が寂しくならないように。
隣に立つ奏芽の甚平の裾をぎゅっと掴む。