キミノタメノアイノウタ
「ねえ、来年も…また来ようね…」
……たとえ千吏がいなくなっても。
私達だけでも、また花火を見に来よう。
小さな夏の思い出を集めて、アルバムを作ろう。
……毎年そうしてきたように。
奏芽ならきっと頷いてくれると思っていた。
頷いて、そうだなって笑ってくれると思っていた。
……けれど、現実は違っていた。
奏芽は何も答えなかった。
何も答えずに、私の顔をゆっくりと撫でた。
裾を握った手にブルブルと振動が走った。
きっと奏芽の甚平のポケットの中に入っている携帯電話だ。
……一緒に聞こえてきたのは。
“ハルのうた”だった。
奏芽は決して携帯をとろうとしなかった。
そして、私に向かってこう言った。