キミノタメノアイノウタ

「瑠菜!!奏芽!!」

私達の重い空気を振り払うかのような明るい声が、グラウンドに響き渡った。

花火の打ち上げ音に負けないように声を張り上げている。

「ごめんっ!!遅くなっちゃった!!」

人ごみを掻き分けるようにして、千吏と灯吾が時計塔に辿り着く。

灯吾の手には金魚やらヨーヨーやらが抱えられていた。

……私にはこれ以上花火大会を楽しむ余裕はなかった。

「私…帰るね…」

理性を総動員して微かに微笑む。

苦しい。

……苦しくてたまらなかった。

「えっ?」

「どうしたの!?」

2人のことなど気にも留めず、ふらふらと歩みを進める。

足元がおぼつかないのは下駄のせいだけじゃない。

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