キミノタメノアイノウタ
「奏芽に私の気持ちなんてわかんないよ!!」
ハッと気が付いた時にはもう手遅れだった。
今更手で口を押さえても発せられた言葉は戻らない。
「わ…私…」
持っていた巾着が地面に落ちる。
赤い巾着。
初めて花火大会に行くことになったときに母さんが買ってくれたものだった。
それを奏芽がゆっくりと拾った。
目の前にいるのは戸惑いを隠せない千吏と灯吾と。
……片手に巾着を持った傷ついた奏芽だった。
もう、居たたまれなかった。
私は奏芽に。
大事な幼馴染に。
……取り返しのつかない言葉を投げつけてしまった。
私は逃げるようにして、打ち上げで騒がしい人ごみの中に混じったのだった。