キミノタメノアイノウタ
「お~い!!瑠菜ちゃ~ん!!」
抜け殻のような私に声をかける人がいるとは思わなかった。
「恵じぃ…?」
だから、手招きしている恵じぃを発見したときは本当に驚いた。
我に返って辺りを見回してみれば、そこは通いなれた道で。
習慣というものは恐ろしい。
自分でも意識しないうちにここまで歩いてきたらしい。
恵じぃは縁側に座布団を敷いて座っていた。
傍らに置かれた盆の上には三角形に切られたスイカと急須と湯飲みが整列していた。
年月が経って深く刻まれた皺が温かな笑顔を形作る。
「一緒にスイカでも食べんか?」
……恵じぃはなんでもお見通しなのだろうか。
私はとうとう我慢できず、大声を上げて泣き出してしまった。