キミノタメノアイノウタ
「落ち着いたかい?」
「うん…」
恵じぃが持ってきてくれたタオルで顔を拭う。
ひとしきり泣いたせいか頭がボーっとする。
「ほら、スイカでも食べなさい。甘いものは人を元気する力があるんじゃよ」
家には恵じぃ以外誰もいなかった。
どうやら花火大会に駆り出されているようだ。
タツも惰眠を貪るはずが、嫌々手伝わされているんだろう。
チリンと風鈴が鳴る音だけが響く。
私は勧められたとおり、スイカを一口食べた。
「甘い…」
驚くほど甘く感じる。
私は自分が思っていたよりも憔悴していたようだ。
恵じぃは満足そうに微笑んで、私の分のお茶を淹れてくれた。