キミノタメノアイノウタ
「でも結局、受験した大学は全部不合格だったんでしょ?」
ダメだったと、笑いながら報告するタツからは悔しさとかは微塵も感じられなかった。
慰めの言葉をヒラリヒラリとかわしていく姿が子供心にタツは強いなあと感心させた。
恵じぃは手を組み合わせて、静かに語った。
「あの頃な、わしは体調を崩して入院しとった。手術して退院したのはいいものの身体は思うように動かくなっとった…」
老いには勝てない。
恵じぃは大病を患ってからそう口にし始めた。
心は元気な分、余計もどかしかっただろう。
「タツがそれをどう思っとたかはわからん。でも、あいつは心根の優しい奴じゃ」
恵じぃにとって身体が動かないことがどんなに辛いことか私ですら分かった。
段々と小さくなっていく身体を目の当たりにしていたタツはどう感じていたのだろうか。