キミノタメノアイノウタ
「瑠菜、帰るぞ」
恐ろしいくらい低い声だった。
……怒っている。あの灯吾が。
でも、自分の行動を考えたら当たり前のことだった。
こんな外灯もない真っ暗な道を祭りの日に女ひとりで歩いていたのだ。
今、考えるととんでもない無茶をしたものだ。
「ありがとね、恵じぃ」
改めて恵じぃにお礼を言う。
恵じぃが声を掛けてくれなかったら危険な目にあっていたかもしれない。
「じゃあね、瑠菜ちゃん。またおいで」
手を振る恵じぃに見送られながら、私は灯吾の背中を追いかけた。
……リンリンと鳴る風鈴がまるで私を励ましているように聞こえた。