キミノタメノアイノウタ
「まったく…本当に心配したんだからな!!」
「ごめんなさい…」
後ろを振り返ろうとしない灯吾の背中に向かって呟く。
木々がざわめく世界の中に響く怒声と謝罪の言葉。
いつもなら言い返すところだが今日は全面的に私が悪い。
柄にもなくしおらしくなる。
「奏芽くんも…心配してた」
「そう…」
奏芽は取り乱した私のことをどう思ったのだろう。
「話は大体聞いた。奏芽くんここを出てってよその大学に行くんだって?」
「そうみたい…」
面倒な幼馴染みだと嫌がられたかもしれない。
……それとも、あとちょっとでお別れだと安心したかも。
自嘲気味な笑みが漏れる。
こんなの、拗ねている子供みたいじゃないか。
自分では心も体も大人になったと思っていたのに、やっていることはその辺の幼稚園児と大して変わらない。