キミノタメノアイノウタ
その結果。
私はTシャツにデニムスカート、レギンスと至って軽装で山に登ることになってしまった。
……予想外だった。
「いいでしょ?たまには」
私の疑念もどうやら千吏にとってはどこ吹く風らしい。
大体、山なんて千吏が好き好んで行きたがるようなところじゃない。
よく見ればいつもサンダルかヒールのあるパンプスを愛用している千吏が、今日はちゃんと運動靴を履いている。
長袖を着ているはずだ。
千吏は虫に刺されるの大嫌いだからだ。
いったいどういう風の吹きまわしなのだろう。
万全の装備の千吏は最初からここに連れてくるつもりだったようだ。
……お腹空いたな。
家を出てから早くも二時間ほど経っていた。
もちろん、朝ごはんは抜きだ。
「ほら、もうすぐ頂上だよ」
指さした先にあるのは光の束だった。
この薄暗い山道もようやく終わりに近付いていた。