キミノタメノアイノウタ
「私と初めて会った時の事、覚えてる?」
千吏がからかうように尋ねれば、私は小さく頷いた。
「覚えているよ。都会から転校生が来たって大騒ぎになった」
案の定、教室に入ってきたのは都会育ちの肌の白い仏頂面した女の子だった。
先生の自己紹介が終わった後、ひと言も喋らずに席に着いたのだ。
「あの時はさ…田舎の暮らしもそこに住んでる人も、周りの景色にも全然馴染めなくて親にも文句ばっか言ってたんだ」
昔を懐かしむようにしみじみ言う様子に思わず吹き出す。
「そんな感じだった!!私は他の人とは違うんだって雰囲気出してた!!」
周りの子たちがとっつきにくいってぼやいていたことを今でも覚えている。
「帰りたい、ここは私のいる所じゃないんだってずっと思ってた」
千吏は窓の外ばかり見ていた。休み時間になっても校庭で遊ばず、ずっとどこか遠くを見ていた。
「でもそんな時…瑠菜と奏芽が声掛けてくれたんだよね」
……だって寂しそうだったから。
嫌がる奏芽を引きずって遊ぼうって誘ったら、千吏は驚いたように目を見開いて言ったんだ。
“私と遊んでくれるの?”