キミノタメノアイノウタ
「本当はずっと不安だったんだ。友達の作り方なんてわかんなかったし。ほら私、ワガママに育ったから」
えへへとはにかんで自分を指差す。あの頃に比べたら随分丸くなったなと思う。
「3人で一緒にここに遊びに来たとき、仲間に入れてもらえたみたいだった」
ふふふっと千吏から思い出し笑いが洩れる。
「小3の私から見ても、瑠菜と奏芽には目に見えない絆みたいなものを感じてたから嬉しかったな」
3人で見た夕日はすっごく綺麗だった。
千吏はキラキラした目で夕日を見ていた。
明日も遊ぼうと言うと、千吏は確かに嬉しそうな表情をしていた。
「ここを出ようって決めたとき、きっと奏芽は絆がある分私よりずっとつらかったんじゃないかな」
「絆か…」
そんなものただの偶然でしかない。
たまたま同じ歳で、たまたま近所に住んでただけにすぎない。
細い、糸のような絆。
私はそんな頼りないもので奏芽を縛りつけられるとは思っていたのだ。