キミノタメノアイノウタ
「ただいま」
そう言って泥だらけになったスニーカーを脱ぐ。
千吏と別れて家に着く頃にはすっかり陽が昇りきっていて、容赦なく私を照らしてきた。
滴る汗を拭って廊下を歩く。
「おかえり」
ひょっこりと兄貴がアイスを咥えながら、台所から顔を出した。
「起きてたの?」
「さっきな」
髪の毛には寝癖がついていて、本当に今さっき起きたようだ。
呆れて物が言えない。
家に帰ってきてからというものの、寝てるか食べてるかのどちらかしか見たことない。
私はあっとため息を吐いて、もうひとりの同居人の行方を尋ねた。