キミノタメノアイノウタ
机に俯せになって、途方に暮れているその時だった。
我が家であまり使われることのないインターフォンの音が鳴った。
私はパンフレットを元通りにしまって廊下に出た。
「はーい。どちら様……」
玄関の扉を開けて来客者の顔を確認すると、ハッと息を呑んだ。
「奏…芽…」
戸口に立っていたのは奏芽だった。
昨日、私が傷つけたその人だった。
心なしか表情が暗い。
そうさせているのが自分だと思うと切なかった。
「今いいか…?」
「…うん」
心の準備なんて出来ていない。
でも私はあの時逃げ出した、けじめをつけなければならない。
「中に入って。お茶でも淹れるから…」
私は一歩隣にずれて奏芽を家の中に招き入れた。