キミノタメノアイノウタ
「私のこと置いて行くくせに、好きなんて言わないでよ……!!」
好きだという言葉なんて要らない。
傍に…いて欲しかった。
……幼馴染として。
……ずっと傍にいて欲しかった。
「放してっ!!」
私は渾身の力を振り絞って、奏芽の身体を押し返した。
ハアハアと息が弾む。
奏芽は柱に背を預けて頭をかいていた。
「何で俺じゃダメなんだよ!!」
「ごめん……」
……私にも分からない。
奏芽のことは大事に思っている。ただ、それは男女の愛情じゃない。
家族愛に近いものだ。
私達は……近くに居すぎたのかもしれない。
……今更、他の関係になどなれないほどに。