キミノタメノアイノウタ

「奏芽のことは幼馴染としか思えない」

……なんて残酷なんだろう。

奏芽が一番言ってもらいたい台詞が言えない。

何を口にしても奏芽を傷つけてしまう。

「くそっ!!」

奏芽は苦々しげに吐き捨てると、玄関へと消えていった。

畳にへたりこんでいた私はその姿を目で追いかけることすら出来なかった。

どうして私は男に生まれなかったんだろう。

男に生まれていたら、きっと親友になれた。

タツと兄貴のように離れていても気の合う親友になれた。

……こんな風に傷つけることもなかった。

私が思っていることを全部伝えられたらいいのに。

でも、私達は不器用で、言葉を使うしかない生き物だから。

思っていることが上手く伝わらない。

ありきたりなことしか言えない。

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