キミノタメノアイノウタ
……だから、ひとは歌うのだ。
……だから、ひとは歌を求めるのだ。
歌うことで相手に気持ちを伝えるのだ。
(ごめんね、奏芽)
気持ちに応えられなくてごめんね。
でも、私は奏芽が大好きだ。
私は気がつくと、"ハルのうた"を口ずさんでいた。
うろ覚えの歌詞とメロディー。
下手くそな抑揚のつけ方。
とても上手いとは言えない。
願いがメロディーに乗って空気を震わせていく。
……どうか届いて。
……届いて欲しい。
こんな歌でも届いて欲しい。
涙が頬を伝って零れていく。
私は灯吾が歌いたがる気持ちが少しだけ分かった。
誰かに何かを伝えたいと思った時、私達の心にはきっと一編の愛の歌が出来上がるのだ。