キミノタメノアイノウタ
「ハ…ル…」
灯吾の顔は血の気が引いて真っ青だった。明らかに様子がおかしい。
「灯吾?」
もう一度名前をよぶと、灯吾の手から週刊誌が滑り落ちた。
「ごめん…ハル……」
灯吾は誰かに向かってしきりに謝ると、肩を震わせて泣いていた。
……何を思って許しを請うのだろうか。
灯吾は私が隣に立っていることも目に入らず、フラフラと外に出ていった。
……追いかけなきゃいけないと思い立ったのは、灯吾がいなくなってしばらく経ってからだった。
「灯吾!!」
靴も履かずに家から飛び出して、辺りを見回す。
そこには、いつもの風景があるだけだった。