キミノタメノアイノウタ
それからの行動は素早かった。
兄貴は急いで着替えると、居間に置きっぱなしになっていた週刊誌をめくった。
「やっぱり…」
何らかの確信があったのだろう。
兄貴は週刊誌を思い切り畳に叩きつけた。
「瑠菜、タツに電話しろ。手分けして探すんだ」
兄貴の肩が怒りで震えている。
「兄貴…その週刊誌って…」
「これと同じものを見たことがある」
吐き捨てるような言い方だった。
兄貴にとっては気分の悪い代物に違いないのだから当たり前だ。
「灯吾がぶっ倒れる前日、これが確かに楽屋にあった」
私は胸の前でぎゅっと手を握った。
灯吾は書き立てられた過去に何を想い、何を感じたのだろう。
そう考えると胸が痛かった。
「わかったら、早く電話しろ」
いつまでも動こうとしない私に兄貴が焦れて電話を促す。
「あいつに何かある前に…な…」
……電話を掛けに行く私の耳にそのひと言がいつまでも残っていた。