キミノタメノアイノウタ
2人して思案に暮れていると、車のエンジン音がこちらに近づいてきた。
「車でその辺回ったけど全然見当たらねえぞ」
運転席の窓が開いてタツが顔を出す。
「そっか…」
手がかりは一向に掴めない。時間だけが経過していく。
「もしかしたら町の外に出たのかもな。まだバスはある時間だろ?」
タツが腕時計を見て時間を確認する。
「そうだな…丁度さっき出発したところだし…」
兄貴が顎に手をやってしばらく考えこむ。
「瑠菜、俺達ちょっと町の外まで見てくるからお前は家に戻れ。もしかしたら帰ってくるかもしれないしな」
「わかった…」
兄貴はタツの車の助手席に乗り込んだ。再びエンジンがかけられ、車が発進する。
私は遠ざかっていく車体を見送ることしか出来なかった。
……本当はついて行きたかった。
私は、はあっと息を吐いて家へと向かった。