キミノタメノアイノウタ
ひとりで歩いていると、灯吾のことばかり考えてしまう。
潮風につられるようにして海を見つめると、なおさら灯吾への想いがこみ上げてきた。
灯吾と堤防の淵に座って、海を眺めた時のことを思い出す。
"海ってそんなに珍しい?"
"珍しいというか……面白いな"
"なんか……絶え間なく波が打ち寄せてくるのがさ。こう……なんて言うか……"
"ごめん、もういいや…"
"まあ、俺は海が気に入ったってことだな"
あの時、灯吾は笑っていたのに。
……一体どこに行ってしまったのだろう。
心当たりはすべて見て回った。
花火大会のあった中学校にだって、タツの家だって、川崎商店にだって行った。