キミノタメノアイノウタ
坂を駆け上がるといつものように古ぼけた校舎が現れた。
私は息を整えて、意を決して歩みを進めた。
(あれ……?)
校門にしがみついてガクガクと揺すっても鉄製の柵は動かない。
……校門には鍵が掛けられていた。
ガクッと肩から力が抜ける。
もしかしたらと思って来たものの、見当違いだったようだ。
(バカか私は……)
よく考えてみれば灯吾が高校になんか来るはずがない。
私は走った疲れもあって、校門にもたれかかった。
あとはもう、大人しく兄貴からの連絡を待つしかない。
……早く帰ろう。
こうしている間に灯吾が帰ってくるかもしれない。