キミノタメノアイノウタ
「灯吾…」
(やっと見つけた……)
私はホッとして涙が出そうなった。
ゆっくりとその背に近寄る。
大声を出して騒いだら儚く散ってしまいそうなほど、灯吾はか弱く見えた。
「いい眺めだな…」
忍び寄る足音で、こちらを向いていなくても私が来たという事がわかるようだ。
「azureの意味知ってるか?」
灯吾からは見えていないのにあたしは首を横に振った。
まるで独り言のように灯吾が呟く。
「……空の色。ああいう透き通ったブルーのことをいうんだ」
「そうなんだ…」
私は空に向かって指を差す灯吾の隣に並んだ。
今日の空は一段と青い。雲がひとつもなくて海との境目が分からないくらいだ。
「綺麗だな…」
「うん」
素直に頷く。
私もこの町で一番好きなのは空と海だった。