キミノタメノアイノウタ

「俺さ…この町に来て初めて、空が綺麗だと思ったよ」

灯吾はふっと笑みを溢した。

「ハルがグループ名はazureにしようって言った気持ちが分かった」

“ハル”

それは灯吾が家を飛び出すときに口にしていた名だった。

……きっと週刊誌のAさんはこの“ハル”って人のことなのだ。

灯吾は手すりに頬杖をついて私の顔を覗き込んだ。



「あのさ…ちょっと長いんだけど俺の昔話…聞いてくれない?」



それは。

灯吾の想いがつまった。

長い。

長い。

……昔話だった。

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