キミノタメノアイノウタ
18
……始まりは一本の電話だった。
「わかった…。直ぐ行く」
ユキは携帯をしまうとコートを羽織った。
「灯吾、僕ちょっと出かけてくるから」
リビングでテレビを見ていた俺はお菓子を食べながら答えた。
「わかった」
「いってきます」
玄関の扉がパタンとしまる。
俺はてっきり直ぐ戻ってくるものだと思ってた。
……ユキがいつもと同じ雰囲気で言うから。
でも。
隠していただけで本当は心の中は悲鳴を上げていたのかもしれない。
俺は気づかなかったんだ。
他人の気持ちを推し量るにはあまりにも経験不足で子供過ぎた。
……ユキは出かけていったきり、それから一週間も戻らなかった。
再びユキが姿を現した時、俺達の間には埋めようのない溝が広がっていた。