キミノタメノアイノウタ

「ユキ！！」

ハルはユキが帰って来るや否や、玄関まで出迎えに走った。

「今までどこ行ってたんだよ！！」

ハルの怒声が辺りに響く。ようやく帰ってきたユキに抱き付くと、ぽかぽかと胸を叩く。

一向に連絡が取れなかったせいで俺達もユキのことを心配していたのだ。

事故に巻き込まれたのではと、特にハルは一睡も出来ないほど気に病んでいた。

「ごめんね…ハル…」

ユキは少しやつれたように見えた。

一週間しか経っていないのに随分歳をとったように思えた。

「父親が倒れてね…。しばらく実家に帰ってたんだ」

靴を脱いで家の中へと入ろうとするユキの行く手を、俺は廊下に仁王立ちになって阻んだ。

「それならそうと連絡くらいしてくれればよかっただろ」

「ごめんね。バタバタしてたんだ」

ユキはばつが悪そうに答えて、スルリと自分の部屋に入る。

……なにはともあれ帰ってきてくれてよかった。

俺はホッと胸を撫で下ろした。

ユキがいないと練習にならない。ライブまでもう日がない。

個人で練習するのも限界がきていたからユキの帰宅はありがたかった。