キミノタメノアイノウタ
「僕は…戻らないといけない」
それが単純な帰省を意味しているわけじゃないのは明白だった。
予想もしていなかったことを告げられて、俺とハルの表情が固まった。
ただひとり侑隆だけが冷静で、ユキに状況を問いただす。
「帰るって…ユキの家って確か東北だろ…?」
「そうだよ」
ユキはその名の通り雪国の出身だった。
雪が積もると家が埋もれることもあると話してくれたことがあった。
……そんなところに戻るなんて。
俺はテーブルにバンっと手を突いて、身を乗り出した。
「azureは…?ライブはどうするつもりなんだよ!!」
「3人でやればいい」
淡々と答えるユキに対して、怒りを通り越して絶望の感情が込み上げてくる。
俺の身体からはすっかり力が抜けて、元通りに椅子に納まった。
ユキがそんなことを言うなんて信じられなかった。
……それは侑隆も一緒だった。